単語帳で depend という単語を「頼る」「〜次第である」と何十回も確認し、小テストでも難なく正解してきた学習者が、英文メールの画面でふと手を止める場面を私たちはよく目にします。送信された文面には「It depends to the schedule.」と打たれていました。depend という語を選んだ判断自体は正しく、意味も相手に届く範囲にとどまっています。欠けていたのは、後ろに置くべき前置詞が on ではなく to になっていた点だけでした。送信ボタンを押した本人も、返信が届くまでその一語の脱落には気づいていません。
「depend」は覚えたのに文にすると崩れる
試験の選択問題であれば、「depend = 頼る」という日本語訳を瞬時に引き出せる人でも、いざ自分で文を組み立てる段階になると手が止まります。単語帳の例文を覚える必要があるのかという疑問を抱く人の多くは、この地点で立ち往生しています。例文の全文を丸暗記する負担は避けたい一方で、単語だけを頭に入れても depend to のような不自然な組み合わせを生んでしまうからです。
単語かフレーズかを決める3つの問い
単語とフレーズ どちらを覚えるべきかという迷いに対して、私たちはすべてをどちらか一方に揃える必要はないと考えています。語の性質によって、一語で覚えて十分なものと、フレーズとして塊で持っておくべきものに分かれます。判断に迷ったときは、次の3つの問いを順番に確認します。
- 相手になる語によって意味や使い方が変わるか
- 前置詞や語順ごと覚えないと使えないか
- 名詞のように一語で完結するか
たとえば decision を覚える際、英語では make a decision と言いますが do a decision とは言いません。1つ目の問いに当てはまるため、この語はフレーズで保持する必要があります。2つ目の問いは depend on のように、後ろの前置詞まで含めないと文が破綻する語に該当します。一方で apple のような名詞は、相手の動詞によって apple 自体の形や機能が揺らぐことは少なく、3つ目の問いを満たすため単語単体で覚えるだけで足ります。
判定表:単語で覚える語とフレーズで覚える語
3つの問いを通すと、普段出会う語彙は次のように自然と振り分けられます。
| 語 | 問い① | 問い② | 問い③ | 覚え方 | 覚える形 |
|---|---|---|---|---|---|
| apple | いいえ | いいえ | はい | 単語で覚える | apple |
| decision | はい | いいえ | いいえ | フレーズで覚える | make a decision |
| depend | いいえ | はい | いいえ | フレーズで覚える | depend on |
| interested | いいえ | はい | いいえ | フレーズで覚える | interested in |
| umbrella | いいえ | いいえ | はい | 単語で覚える | umbrella |
| heavy | はい | いいえ | いいえ | フレーズで覚える | heavy rain |
heavy は「重い」という単語単体で処理されがちな語ですが、heavy rain(大雨)や heavy traffic(激しい渋滞)のように、後ろに来る名詞との組み合わせによって日本語の対応関係が変わります。こうした組み合わせの感覚がないままストックだけを増やしても、実際の会話や作文では使えないまま手元に溜まっていきます。保存しただけのフレーズが口から出てこない問題でも触れたように、ただ集める作業と運用できる状態の間には大きな開きがあります。
「全部フレーズで覚えればいい」という反論
こうした判定表を見せると、「迷うくらいなら最初から全部フレーズで覚えたほうが確実ではないか」という意見が必ず出ます。apple も an apple や eat an apple という塊で覚えておけば、冠詞の抜け漏れや動詞の選定で迷うリスクを減らせるという主張です。この考え方には筋が通っており、学習時間に制限がないのであれば、すべての語を文脈つきのフレーズで固定するほうが間違いは少なくなります。
母語の感覚を振り返っても、私たちは「決定をする」より「決定を下す」を選び、「傘を使う」よりも「傘をさす」と表現します。日本語でもコロケーションを意識せずに身につけている以上、英語でもすべてを塊で覚えるのが自然に見えるのも頷けます。ただ、独学を続ける大人の学習時間には明確な制約があります。一語で覚えても困らない具体名詞にまで余分な語を抱え込ませると、復習の総量だけが膨らんでいきます。私たちは、どこにエネルギーを割くかという優先順位の問題としてこの基準を置いています。
フレーズ側に入った語を練習するときに
判定表でフレーズ側に入った語を扱う際、私たちは LingoTim に単語単体ではなく depend on the schedule や make a decision という組み合わせの形で登録しています。短時間のセッションの中で文脈つきの練習や想起練習を挟み、間隔をあけて再度出会ったときに前置詞まで正しく呼び出せるかを確かめるためです。
ただし、この判定表にもきれいに収まらない語群が存在します。take、get、have といった高頻度の基本動詞です。take を3つの問いにかけると、take a break、take a photo、take part in のように相手の語によって意味が変わり、前置詞の配置も固定されているため、すべての問いに「はい」がついてしまいます。これらをすべてフレーズとして網羅しようとすれば、登録すべき組み合わせは際限なく増え続けます。基本動詞をどこまで塊で扱い、どこからを一語の感覚に委ねるべきなのかについて、私たちはまだ明確な境界線を引ききれずにいます。
よくある質問
英単語は単語とフレーズ、どちらで覚えるべきですか?
語によって変わります。相手の語で意味や使い方が変わる語や、前置詞ごと覚えないと使えない語はフレーズで覚えます。appleのように一語で完結する名詞は、単語で覚えれば十分です。
単語帳の例文は覚える必要がありますか?
例文を丸ごと暗記する必要はありません。ただ、depend onやmake a decisionのような組み合わせの部分は、例文から抜き出して覚えておくことを私たちは勧めています。
コロケーションはどう覚えればいいですか?
動詞と名詞、形容詞と名詞といった組み合わせを一つの単位として登録し、文脈の中で思い出す練習をします。一語ずつ分けて覚え直すと、組み合わせがまた抜け落ちやすくなります。
全部フレーズで覚えたほうが確実ではありませんか?
確実さという点では一理あります。ただ、学習時間が限られている場合は、一語で足りる語まで組み合わせにすると覚える量が増えます。私たちは、手間をかける語を選ぶほうを優先しています。
