英語の単語帳アプリは、まず「用意された教材ですぐ始めたいか、自分の語句をカードにしたいか」で候補を分けると選びやすくなります。そのうえで、自分が覚えたい語句や文に音声を使えるか、無理なく復習できるかを確認しましょう。
私はLingoTimの共同創業者です。この記事ではLingoTim・Anki・WordHolicを取り上げますが、順位は付けません。教材を準備する手間と、毎日必要になる操作から、候補を1〜2個に絞るための比較です。
まずは既成教材派か、自作カード派かを決める
最初に、直近で英語を使いたい場面を一つ選んでください。たとえば、旅行先での注文、仕事での返答、日常の予定調整です。「英語全般」より、必要なカードを判断しやすくなります。
次に、教材の準備にどれだけ時間を使えるかを考えます。
- すぐ学習を始めたい: 用意された既成デッキを重視する。収録語句が自分の用途に合うかを見る。
- 仕事や読書で出会った語句を覚えたい: 自作カードを重視する。入力だけでなく、意味の確認や修正の手間も見る。
- 土台となる教材も、自分だけの語句も欲しい: 既成デッキと自作を併用できる候補を残す。
ここで区別したいのが、既成教材・利用者の共有デッキ・外部ファイルの取り込みです。
既成教材は、あらかじめ用意された内容から選ぶ方法。共有デッキは、ほかの利用者が作った内容を使う方法なので、意味や例文が自分に合うかを確認します。取り込みは、手元などにあるデータをカードにする方法で、アプリ内に教材が収録されていることとは別です。
LingoTim・Anki・WordHolicを同じ軸で比較
以下は、各製品で案内されている機能を整理したものです。Ankiの情報は公式サイト、WordHolicの情報は公式製品ページに基づきます。「要確認」は非対応という意味ではありません。
| 比較軸 | LingoTim | Anki | WordHolic |
|---|---|---|---|
| 教材の入手 | 既成デッキ、自作、学習目標に基づく自分向けデッキの自動生成 | 自作、利用者の共有デッキ | 自作、外部ファイルの取り込み・共有。内蔵教材の有無は要確認 |
| 自作カード | 対応 | 対応 | 対応。表・裏・コメントを使える |
| 単語・フレーズ・文 | 単語、フレーズ、チャンク、文に対応 | レイアウトを調整可能。使いたい文の表示は実際に確認 | 熟語・例文の登録を案内 |
| 音声 | 音声再生 | 音声などのメディアに対応 | 30言語の読み上げを案内 |
| 復習 | 間隔反復(SRS) | 想起の自己評価に応じて次回を予定。復習タイミングを調整可能 | 忘却曲線に沿う反復を案内。日程の詳細は要確認 |
| 対応環境 | 使用予定の端末で利用条件を確認 | Windows・macOS・Linux、iOSのAnkiMobile、AndroidのAnkiDroid | iPhone/iPad版、Android版を案内 |
AnkiDroidは貢献者が開発するアプリです。また、各製品の最低OSや現在の配信状況は、使う端末に合わせて確認してください。
この比較で大切なのは、同じ「音声」「復習」という項目でも、中身まで同じとは限らないことです。表で候補を減らしたら、自分のカードで使える条件を見ます。
音声と復習は「ある・なし」より使える条件を見る
音声は、どこから用意するのか
音声には、教材に付属する音声、文字を読む読み上げ、利用者が追加する音声ファイルなどがあります。「音声対応」だけでは、自作した文をそのまま聞けるかまでは分かりません。
候補を試すときは、次の点を確認しましょう。
- 自作した項目にも音声を使えるか。
- 単語だけでなく、文全体を再生できるか。
- 音声は自動で用意されるのか、自分で追加するのか。
- 復習中に、聞き直したい箇所を迷わず再生できるか。
Ankiの公式サイトは音声への対応を案内していますが、それだけで自動生成までできるとは判断できません。WordHolicも読み上げを案内していますが、自作カードのどの欄を読むかは確認が必要です。LingoTimについても、自分が作りたいカードでの再生手順を確かめて選んでください。
復習は、次に何を出す仕組みか
SRSは、間隔を空けて復習する仕組みです。ただし、次の機能は分けて考えます。
- 復習日程の自動調整: 次にいつ復習するかをシステムが決める。
- 暗記状態による絞り込み: 覚えていない項目などを選んで表示する。
- 手動の反復: 自分で範囲を選び、繰り返す。
「苦手なカードだけを表示できる」ことと、「次の復習日を自動で決める」ことは同じではありません。Ankiは想起の自己評価に基づく日程設定を案内しています。WordHolicは忘却曲線に沿う反復を案内していますが、ここでは自動SRSとまでは断定しません。
私は、復習機能の数よりも「今日開いたら何をすればよいか」が分かるかを優先することを勧めます。すでに復習が溜まっている場合は、乗り換えを決める前に単語アプリの復習が溜まったときの再開方法も参考にしてください。
同じ語句を使って、作成と毎日の操作を試す
候補ごとに別の教材を眺めるだけでは、操作の違いが分かりにくくなります。そこで、自作できる場合は、同じ内容を登録して比較します。
次の3項目は、検証用の例です。
| 項目 | カードに入れる意味・場面 | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| receipt | 領収書、レシート | 短い単語と意味を素早く登録できるか |
| make a decision | 決める、決定する | 単語の組み合わせを一まとまりで扱えるか |
| I'd like a coffee, please. | 「コーヒーを一杯お願いします」と注文する場面 | 文全体の表示、改行、音声再生が使いやすいか |
単語を覚えることも、よく使う組み合わせや文を覚えることも役立ちます。何をカードにするか迷う場合は、単語とフレーズをどう選んで覚えるかを参考に、今回の用途に必要なものを選びましょう。
準備から翌日の復習まで確認する
まず、入力、修正、意味の確認、音声の準備にかかった時間を記録します。これは製品の一般的な性能値ではなく、自分にとっての準備負担を見るための記録です。既成デッキ中心なら、目的に合う内容を探す時間を記録してください。
続いて、次を確認します。
- 文が長くても、途中で切れずに読みやすいか。
- 答えを見る前に、意味や英語を思い出せる表示になっているか。
- 答えを隠す・表示する操作が分かりやすいか。
- 修正したい箇所をすぐ直せるか。
- 翌日、復習をどこから始めるか分かるか。
たとえば「準備は週10分、復習は1日5分まで」と、自分用の上限を先に決めておきます。これは推奨学習時間ではなく、生活の中で続けられるかを判断するための仮の条件です。必須機能がそろい、その時間内で扱えるものを候補に残します。
料金と対応端末は、必要機能をそろえて確認する
料金は、ダウンロード時の表示だけで比べないでください。使う端末、必要な教材、音声などの条件をそろえてから判断します。
購入や契約の前には、次の項目を確認しましょう。
- 価格表示: 日本向けの表示か、通貨は何か、税込みか。
- 支払い: 買い切りか継続課金か、課金周期と年間総額はいくらか。
- 継続条件: 自動更新の有無、解約方法、解約後の利用範囲はどうなるか。
- 利用環境: 端末とOSに対応しているか、購入経路によって条件が変わるか。
- 必要機能: 使いたい教材や音声が、比較している料金に含まれるか。
- 利用場所: 同期とオフライン利用は可能か。可能な場合、カード本文や音声のどこまでが対象か。
同期やオフライン利用は、この比較表だけでは判断できません。案内が見つからない場合も、すぐに非対応と決めず、必要条件として確認してください。
候補を1〜2個に絞り、会話で使う練習につなげる
ここまでの条件を、次のように候補選びへつなげられます。
- 既成教材から始めたい: LingoTimを候補にする。目的に合う内容があるかを確認する。
- 自作と復習日程の調整を重視する: Ankiを候補にする。設定やカード準備に使える時間も含めて判断する。
- 自作の熟語・例文や、外部ファイルの取り込みを重視する: WordHolicを候補にする。手元のデータを使うまでの手順を確認する。
- 音声を最優先する: 機能名だけで決めず、同じ文で準備と再生の条件を比べる。
既成デッキと自分用の語句を両方使いたいなら、LingoTimで目的に合うデッキを選ぶか、自作・学習目標に基づくデッキ生成を検討できます。
選んだ後は、カードで答えられるかに加え、使う場面でも取り出せるかを確かめます。たとえばカードを閉じて注文を言い、coffeeをteaに替えてみる。仕事用なら、覚えた返答をカードなしで言い、実際のやり取りで合う場面に使ってみます。単語帳での復習と、相手の返答を受けて話す練習は、役割が異なります。
まずは必須機能を二つ、準備と復習に使える時間を一つずつ決めてください。その条件で候補を1〜2個試し、実際の操作で無理なく使えるものを残す。それが、自分に合う英語の単語帳アプリを選ぶための具体的な進め方です。
